竜王町に想定される災害対策と自前の電力需給システム
防災・減災対策は一刻の猶予もゆるされません。地球温暖化により異常気象はめずらしいことではなくなり、活発な活動をつづける地球は地震を頻発しております。一挙に拡大した情報の質と量を地域の特性を組み合わせと予測精度が大きく向上し、適切な防災対策が可能となっています。しかし、データの収集・解析には時間がかかります。そこで竜王町(人口12,000人、面積は45km2) に限定し検討いたしました。
I 竜王町の防災対策
▶ 豪雨や地震による災害が痛ましい。地球温暖化ガスによるとされる異常気象はめずらしいことではなくなり各地で頻繁に洪水が発生しています。また地球は活動期をむかえたのか大地震崩壊がしばしば各地で起っています。防災・減災対策は一刻の猶予もゆるされません。
▶ 災害のタイプと規模はさまざまで、自然現象に大きくかかわる事項と人がかかわっている事項に分けられます。崩壊の発生場所、破壊力などを解析し、危険が迫ったことを予知し警戒避難体制をとることです。
▶ 近年の情報技術の飛躍的な発展により鮮明な衛星画像が日々更新され、斜面変形、崩壊範囲・機構などの推察の手がかりなっています。地形図や地質図もカンタンにダウンロードできます。これらの情報を重ね合わせますと予測精度が向上し、現在の防災マップには記載されていない事柄も顕在化してきます。
▶ 防災計画は国、都道府県、あるいは市町村によってすでに作成され、実施に移されていますが、とくに、近年、大規模な洪水、斜面崩壊が多発し、その重要性が加速しています。地球環境保全トラスト株式会社はさまざまな災害を机上と一部現地調査を加えて、グローバルな視点とローカル視点から総合的に解析し、防災計画に役立ています。
▶ しかし、分散した多種多様な情報の収集、解析には時間がかかり、広範な地域での適応は困難です。ここでは、ケーススタディとして竜王町(人口12,000人、面積は45km2) に対象をしぼって、災害の規模と対策について検討しております。自然地理な見方に重点をおいた防災計画になっています。
▶ つかいました主な資料は、Google Earth、国土地理院地図、地質調査所地質図と竜王町地域防災計画(令和5年8月)、竜王町地域防災計画の修正概要、竜王町環境基本計画 ( 令和6年2月)、竜王町バイオマス産業都市構想 (令和4年9月)です。
1. 竜王町の地形と地質
自然地理の基礎資料ととして、竜王町の衛星画像、標高図、地質図をダウンロードしました。下図のようになっています。町は平地、丘陵、山地の三つに区分されます。
(i)平地 (蒲生沼沢地):古琵琶湖層の一部で、200万年ほど前に堆積した粘土や砂などから形成され、現在では堰(せき)や用水路が施設され、水田稲作農地になっています。
(ii)丘陵地:平地と同様に古琵琶湖層ですが、少し古く、硬い地盤になっています。工業・商業、畜産・果樹園を形成したいます。
(iii)山地は中生代の花崗岩で、現在は森林におおわれています。これらは人文地理的事柄と自然地理的な事項がうまく融合してます。
2. 画像でみる竜王町の40年間のおいたち
2022年、2002年、1982年の20年間隔で竜王町の古い衛星画像をグーグルアーツで見たのが下図です。40年間のまちの移り変わりが読みとれます。水田・稲作用地となっている平地は年を追って整備がすすみ、今日では整然としたすがたになったのがわかります。丘陵地帯および山地のすそ野はもっとも大きな変化をしているところです。40年まえの画像はあちらこちらに荒廃地が散在しています。その後順次減少し、かわってハイテク産業工場群と商業ゾーンに移行しています。また、40年間に道路建設が進み整備されています。とくに幹線道が新設され町外への行き来が容易になっています。また平地と丘陵 (工業ゾーン)の境界には小幅な森林が残されていますが、これは景観保全に貢献しています。山地では裸地の減少がめだっています。
3. 竜王町のハザードマップ
竜王町のハザードマップは滋賀県および竜王町から公表されています。下図のようになっていますが、当然のことながら両者に大きな差はありません。風水害では日野川と惣四郎川の合流付近が、斜面崩壊・土砂流では蒲生郡と竜王町(狭義)が、 地震では竜王町北部がもっとも災害リスクが高いところとなっています。これら地域の衛星画像などから推察される知見を補足して見よう。
滋賀県防災情報マップ
竜王町地域防災計画
3-1. 洪水
(i)惣四郎川と日野川の合流点付近の地理と画像: 竜王町北東部の町界は日野川になっており、この日野川に北にながれる祖 父川、惣四郎川、善光寺川が町域内で合流しています。標高の低く、水害のリスクがもっとも高いと指摘されているのは惣四郎川と日野川の合流点付近です。これまでに豪雨により床下浸水や農地の冠水、河川への被害などが記録されています。近年、異常気象によりこれまでの記録ない雨量が観測され、災害が頻発しています。
山形県最上川で、豪雨により9河川が氾濫、オーバーフローしています。堤防そのものの崩壊はまぬがれましたが、住宅の浸水被害や道路が冠水し広範に被害が出ています。孤立集落ができました。
(ii)蒲生郡の土斜面崩壊・土石流
竜王町では大規模崩な斜面崩壊・土石流の発生リスクは山地の花崗岩体中にあります。花崗岩の風化は、砂岩や頁岩などの堆積岩とはことなり深部にまでおよび「まさ土」からなる「深層風化帯」が形成されます。豪雨や地震によってこの風化帯がしばしば斜面崩壊を起し、土石流となってながれます。高い流動性もっていますので崩壊自体は小さくても足の長い崩壊になります。場所によっては標高の高いところが低いところよりも厚い風化帯になっているいることがあります。また頂部に規模の小さな滑落崖でき、これが兆候になるともいわれています。また、広域の花崗岩全体が風化されますと、同じような条件の斜面がいくつもでき同時で崩壊します。
2018年に発生した広島県東広島市の豪雨災害(広島国際大学東広島キャンパス付近)
斜面崩壊・土石流
その他の斜面崩壊
(iii)地震
地震予測は過去に起こった地震がのこした記録をもとにおこなわれていますが、日本中どこに起こっても不思議ではないとされています。兵庫県南部地震(阪神大震災)後に発表されている近畿の活断層(内陸型地震)の分布および地震活動期と平穏期に分けて過去の地震の状況が整理されています。これを見ますと、竜王町およびその周辺地域の顕著な活断層の記載は少なくなっています。竜王町を震源とする地震の発生は小さいとかんがえられます。また近い将来まちがいなく起こるとされている海溝型地震(南海トラフ~東南海~東海)は規模が大きく対策がいそがれています。したがって、いづれの場合も竜王町は震源そのものからは少し離れた位置になると想定されます。この点を踏まえた耐震対策が必要です。なお、竜王町地域防災計画では大鳥居断層帯による震度6弱以上が想定されておりますが詳細な調査が必要です。
II 竜王町の防災と自立型の電力システム
▶ 2024年1月に能登半島地震が起こりました。この能登半島地震では多数の集落が孤立し、解消に時間がかかっています。地震発生から2週間以上孤立した集落もありました。半年たった今日でも能登半島のインフラ設備の回復は完全ではありません。東北地震、阪神大震災のときも孤立集落は発生しましたが、能登半島地震ように多数の集落が、長期間わたって孤立することはありませんでした。小都市の災害復興にあたっては、大都市の回復と並行して推し進めざるをえない事柄もありますが、集落の孤立を防ぎ、町独自で自ら再生できるレジリエンスのある町にすることが大切です 。災害復旧には道路とライフラインの維持が重要です。なかでも電力確保は大切です。生活の基盤を支えるためにもっとも重要な要素の一つです。電力が確保されることで、通信、医療、食料供給などの他の重要なサービスも維持されやすくなります。
▶ 平時における竜王町の電力をしらべますと、電力の供給は町外の地域電力(関西電力株式会社)と送電(関西電力送配電株式会社)に依存しているのがわかります。町内にも太陽光発電により電力がつくられていますが、その一部が自家消費されているものの、ほとんど全量が外部電力に売電されています。そこで、竜王町地域防災計画の修正概要では幹線の道路や送配電をより強固なものにすることにより、大都市から孤立化を防ぎ、災害の早期復旧に役立てようとしています。緊急輸送道路の確保や無電柱化がかんがえられています。電柱が倒れ、道路を塞ぐなど、緊急活動に支障がでないようにする対策です。
2. 望まれる災害時における自前の電力システム
すでに触れましたように、竜王町に想定される災害の多くは広範に発生した大災害域の一部になる確率が高いと推察されます。災害がおこったときには周辺の市町村も同じような状況あるいはそれ以上に深刻な状況になります。したがって、外部からの支援に多くを期待するわけにはいきません。たとえば南海トラフ地震では、竜王町は震源から少し離れているため、大阪や京都にくらべて被害は小さいと推察されますので十分な支援が届かない可能性があります。災害時にそなえて強固な幹線道路と強靭な送電線の準備だけでなく、緊急時にも稼働する自前の最小限の電力需給システムの確保が必要です。竜王町には太陽光発電、混合水発電、小売電力会社建設の適地が存在しており、これらを組み合わせることでと自立型の電力システムが構築可能です。役所関連施設に耐震を考慮した太陽光発電を設置し、強靭な送電網と蓄電機能を備えた小売電力会社を活用する。蓄電池としては地域特性を活かした混合水発電が適切です。隣接する湖南市では小売電力会社で実績をあげています。
3. 災害時にも発電できるドラゴンマイクログリッド
竜王町の自立型の電力システムは、すでに提案しておりますドラゴンマイクログリッドの一部に組み込み、共同で運営しますと経済的にメリットが大きく、実現性が高くなります。発電は庁舎、防災センター、学校、駐車場などの屋根に災害、防火に対処した太陽光発電所を設置します。昼間に発電された電力はそれぞれのを施設でつかい、余剰電力は混合水発電の上池へ揚水し蓄電し、夕方や夜間に電気に戻して使用します。太陽光発電の普及を促進するための PPA(Power Purchase Agreement)モデルにも該当しています。地域新電力会社(ドラゴンエナジー)の適地として小口を選定ました。水害・山崩れなどの災害リスクの小さいところです。竜王町関連施設とドラゴンエナジーの間は大半が竜王町滋賀県地域防災計画において緊急輸送道路(国道8号、名神高速道路)に指定され、無電柱化が計画されています。蓄電機能をもった小型混合水発電所は上池には善光寺川池を下池には八重谷沈砂池を利用しコスト削減をはかっています。竜王ドラゴンマイクログリッド構想は地球環境保全トラスト株式会社がCO2排出量削減を目的として提案しており、詳細は別途詳述しております。